ハリケーン静佳

台風の前・最中・後・・・・と、関わった皆様には大変ご迷惑をおかけいたしました。お詫び申し上げます。

宮古島はまだまだ台風の余韻が残っておりますが、島民全員後片付けを全力で、なおかつ「島タイム」で頑張っております。穏やかな海が戻るのもあともう少しです。

一昨日は、あの空が嘘のように綺麗な夕日が見えました。大きくて真っ赤な夕日は嵐の終わりを告げているかのようでした。皆様にもご覧いただきたかったですが、カメラを構える時間と心の余裕を持てず、ごめんなさい。

さて、ポークランチョンミートはまだまだカップルさん、ご家族の方も続いております。台風の前にいらしたお客様はラッキーでしたね。海も存分に楽しめたことと思います。帰る頃には真っ黒クロスケに・・・・。

一人旅の方も少しずつ増えてきました。

皆さん、それぞれの島タイムをそれぞれの楽しみ方で過ごされていました。

また、是非、お待ちしております。

ポークランチョンミートの「海を眺めるレストラン HELL’S KITCHEN(ヘルズキッチン)では、宿泊の方限定で朝食と夕食をお出ししております。完全予約制・完全お任せメニューです。

朝食はこんな感じです。

夕食は・・・

台風の前に暫くの間「宇宙戦艦ヤマト」が沖に停泊しておりました。スティーブン セガールが乗っているのは潜水艦。

夕日は冬に向かって左へ左へと移ってきています。今はちょうど宿から見たら樹の陰に隠れてしまいます。西日の暑さは逃げられますが、やはり正面の方がいいですね。

それでも、夕日が落ちた後の空のカラーバリエーションは相変わらず美しいです。

テラスのカウンターでその一部始終を眺めながらお食事をどうぞ。

静佳日記 ***********

台風が来るかもしれない。

それは、お客さんとのちょっとした会話の中で出た言葉だった。

2年もの間台風が来ていなかったので、すっかり気が抜けていたと思う。

「どこからどこまで片付けようか・・・」

家の周りを見回した。台風の大きさによって養生は変わってくる。

台風情報とにらめっこしながら、片づけを開始。

テラスに並んだ植物の瓶を仕舞うところがなくて自宅の洗面所に置いた。

「これはこれで何だか可愛いね」

そんな余裕をぶっこんでいたのはこの時までだった。

経験したことのない強い台風が容赦なく、ゆっくりとやって来た。

ぴゅ~~ぴゅ~~と恐ろしい声をたてながら次第に強くなっていく風。雨戸のガタガタという音が吹っ飛んでしまうのではないかと想像させる。

そして、予想もしなかった事態が・・・。

「窓から雨が入ってきています!!」

お客さんに言われて2階へ見に行くと、なんとアルミサッシの窓から雨が漏れてきているではないか!!

あり得ない。

頭に浮かんだ言葉はそれのみ。

風向きが変わった台風はちょうどその時、海の正面から吹いていた。

「台風の時、西からの風はやばいぞ」随分前に海人のおじさんが言っていた言葉が本当だったのだと思い知らされる。強すぎる風は窓ガラスをも膨張させ、できた隙間から雨が入り込んできていたのだった。

想像を絶する現実を数秒で受け入れるしかなかった。ありったけのタオルを運び、窓の周りに詰め込み、絞る作業が何時間にも及んだ。

そして、停電した。いや、どっちが先だったのかさえ、もう記憶がない。

そこから先は、お客さんの安全を確保しなければというプレッシャーと、怒っているようにしか聞こえない風の音への恐怖心との闘い。恐怖から逃れたいために何度も耳を両手で覆った。

予想より長く続いた「怒っている台風」は、翌朝、島を吉幾三ワールドへ変えていた。

電気もねえ。テレビもねえ。冷~蔵~庫~はただの箱。

電話もねえ。携帯ねえ。インターネットは何者だ?

シャワーは。あるけれど。出~てくるのはただの水。

コンビニも。あるけれど。やっているとこ見たことね~~~~~!!

オラ、こんな島やだ~~。オラ、こんな島やだ~~。東京から来たよ~~~。

・・・・・だが、驚いたことは他にもあった。夜が明けて車で巡回していると、停電でほぼ全ての信号機がついていないのに、違和感がない。都会で信号機がとまると警察官が交通整理に立つが、ここでは誰も何もしないでも困らない。いつもと全く変わらない。

普段から交通ルールに独自なものがあるからなのか、至極スムーズに交差点が流れていた。「譲り合い精神」が身体に染みついている為もあるだろう。

色々なものが壊され、飛ばされ、キビ畑のサトウキビはドライヤーをあてたかのように片方に奇麗にセットされていたが、

きっとこの島は大丈夫。

そう思った。

そして、大きなホテルでは「部屋がびしょ濡れなんだけど!!」「荷物が濡れちゃったじゃない!!」「エアコンがつかなくて暑い!!」「何か食べるものを提供して!!」・・・と苦情の嵐だったという話を漏れ聞く中、うちはお客さんにも恵まれた。

文句どころか、タオルをず~~っと一緒に絞ってくれる人。あり合わせの食事しか出せなかったけれど「美味しかった」と言ってくれる人。「大丈夫な部屋に移動してください」と声をかけても、「2つも部屋を使ったら後で掃除が大変だから」と断る人。「明日そちらへ行くんですけれど、何か必要なものを買っていきましょうか?」と繋がらない電話をず~~っとかけ続けてくれていた初対面の人。

「怒っている台風」は、私達に色々なことを教えてくれたような気がする。

そして昨日、ようやく手に入れた初めて買う食パンで夫は朝食の試作品を作る余裕もでて、意外にもそのパンが美味しかったと発見があり、

私はガスでお湯を沸かし、外で手動でコーヒーを淹れるキャンプのような楽しさを思い出した。

もう、こんな台風はご免だけれど、人が「何か大切なこと」を忘れかけないように自然は時々「怒って」くれるんだ。勝手にそう思うことにした。

そして、昨夜遅くに「お疲れちゃん」でこっそり二人で街へ繰り出し、我を忘れた。